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2014年7月16日診療日誌

12歳メスのキャバリアちゃんが、左前足をかばって歩いている、とのことで来院されました。

レントゲン検査では明らかな異常は認められなかったのですが、身体検査にて肩関節から痛みを訴えることがわかり、さらに詳しく触診すると、通常よりも関節可動域が広くなっていました。つまり、肩関節が開き過ぎている状態です

ここでひとつ病名が仮診断されるのですが、これを確定診断するためにはその他の肩関節疾患が無いことを検査で明らかにしていく必要があります。ちなみに、このような診断方法を私たちは『除外診断』または『ルールアウト』と呼びます。

 

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これで診断・治療の方向性が見えた!と思いきや、肩関節のレントゲン写真に自然と写り込む肺やに妙な陰影が・・・・。

 

 

飼い主様に再度問診を取り直した所、そう言えば咳をする事がある、気になるほどでなかった、と。。肺野を撮影し直すと結節・混合パターンと呼ばれる所見が得られました。

 

以上を踏まえ、胸部と肩関節のCT検査を提案させて頂き、実施することになりました。

 

その結果、肩関節については当初の仮診断通り、『肩関節不安定症』と診断されました。現在の所、この疾患に対する有効な治療方法はありません。前肢帯にコルセットのようなサポーターのオーダーメイドで作製し、固定するしか方法が用いられます。

幸い、この子は重症では無いため、痛みを訴えるようなら安静と鎮痛剤の処方で様子を見る事になりました。

 

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一方で肺野のCT検査結果は芳しくなく、肺の至る所に腫瘤病変を形成し、所々でブラと呼ばれる肺が破れた所見も得られました。

 

 

通常の肺腫瘍の所見とは異なるため、肺胞洗浄液を回収し、細胞診および全ての培養検査を実施しましたが、残念ながら診断を得る事が出来ませんでした。。。

 

 

今回は『足をかばっている』と言うごく一般的な診療から、肺疾患を発見することに至りましたが肺疾患に関しては確定診断を得る事が出来ませんでした。。

CT検査や遺伝子検査など、獣医療は進歩を遂げましたが、未だに原因不明の疾患に遭遇する事はあります。

 

この子は前足や咳に関しても、飼い主も私も共通して一般状態や生活の質を下げることは無く、食欲は元気の良さは全く問題無いため、経過観察をしていくことになりました。

この子の生涯の中で、この疾患が悪化しない事を祈るばかりです。

 

山本@獣医師

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