腫瘍科・緩和ケア
近年のペットの高齢化に伴い、腫瘍疾患を罹患する動物は増えてきました。しかしながら、これに伴い獣医学も発展を続けており、以前では難しかった腫瘍の治療ができるようになり、診断にも遺伝子検査なども含まれ、腫瘍科診療は多面的になってきました。
腫瘍は一般的に、腫瘍内科と腫瘍外科に分かれますが、当院ではこのどちらにも対応できる準備を整えています。
代表的な腫瘍科の病気
リンパ腫
犬・猫ともに非常に多い血液のガンの一種です。白血球の一種でありリンパ球が異常増殖して起こる病気で、幅広い年齢層で遭遇します。
犬と猫、そして主として起こる臓器によって病型が分類され、それぞれに病気の傾向も異なってきます。
治療には抗がん剤が用いられるのが一般的です。
犬の乳腺腫瘍
中高齢のメス犬に多発する病気で、特に幼い頃に避妊手術を受けなかった犬に多い傾向です。避妊手術を受けなかった犬のおよそ4頭に1頭はこの病気に罹患するとも言われています。
古い報告では50%が良性、50%が悪性と、半々にそのタイプが分かれると言われます。いずれにしても発見し次第、手術による摘出が第一選択です。広範囲に拡大し、腫瘍が大きくなると全身的な影響が出るため、早々の摘出が望まれます。
猫の乳腺腫瘍
発生傾向自体は犬と近いのですが、悪性の割合が非常に多く、一般的には犬より猫の乳腺腫瘍の方が悪い病気として獣医師は認識しています。こちらも早々の摘出が行われることが推奨されます。
しかしながら、犬も猫も共通ですが、これらの疾患は早期の避妊手術にて罹患率を下げることができます。
各種皮膚腫瘍・体表腫瘍
最も飼い主様が気づく病気で、多くはシコリに気づかれて来院されます。皮膚腫瘍も良性のものから悪性のものまで様々で、院内検査にて一定の診断が得られます。
最終的には摘出が望まれるケースが多いのですが、経過観察可能な良性病変もあります。非常に幅広い可能性があるため、シコリを発見したら、ご自身で判断されず受診をお勧めします。
(例)肥満細胞腫、扁平上皮癌、組織球種、形質細胞腫、肛門周囲腺腫、脂肪腫など
消化器腫瘍
下痢や嘔吐、食欲不振が主な症状です。できる臓器によって症状や予後は異なりますが、外科手術を行うケースもあれば、抗がん剤治療を行えるものもあります。必要に応じて栄養チューブの設置を行うこともあります。
(例)腺癌、間質腫瘍(GIST)、平滑筋種、肝臓腫瘍、消化管型リンパ腫など
口腔腫瘍
悪性のケースも多い非常に怖い病気が多いエリアです。もちろん良性のケースもありますが、歯周病の中に隠れているケースもあります。歯周病が治療されずに放置されていると口腔腫瘍になるとも言われており、口腔ケアは非常に重要になってきています。
(例)メラノーマ、扁平上皮癌、棘細胞性エナメル上皮種、繊維種性エプリスなど
その他の腫瘍
他に多く遭遇する腫瘍疾患として、精巣や卵巣、子宮や膣に発生する生殖器系腫瘍、腎臓や膀胱などの泌尿器系腫瘍、骨肉腫、脾臓腫瘍があります。 他の腫瘍と同様に、腫瘍が形成される位置によって治療方針が異なってきます。
緩和ケア
病気と戦うことが全ての治療ではありません。もちろん、治療できるものは出来るだけ治療に向かって考えることは非常に大切なことです。頑張って手術や抗がん剤治療を行っても、腫瘍は根治に至らないケースもあります。
必要に応じた治療を行いながらも、最後の時間を大切に過ごすこと、これまで一緒に生活をともにした家族を見送る方法を一緒に検討しませんか?
緩和ケアとはペインコントロールを行い、終末期医療(ターミナルケア)における介護的ケアを検討していくものです。
腫瘍科の検査方法
身体検査・聴診
一般身体検査の他、触知可能な腫瘤であれば、その形態や硬さから推定できるものもあります。
レントゲン検査
はっきりと輪郭を持って確認できるケースは少ないですが、巨大化していたり、周辺臓器を押しのけるようにレントゲンに映し出されることにより、その存在を確認することができます。しかし、腫瘍と診断することはこれだけでは難しいです。
超音波検査
近年、機器の目覚ましい性能向上により、より正確に腫瘍臓器の位置や由来を確認できるようになってきました。何より、超音波検査は全身麻酔を必要とせずに腫瘍の存在を確認できる有力な検査方法です。
細胞診
ごく小さな針を腫瘤に刺すことで、小さな細胞片を得ることにより、腫瘍診断が可能なケースがあります。また、この検査で腫瘍であるかないかも、検査ができることもあり、この検査も小さな痛み(採血と同程度)で可能な安全な検査の1つです。 ただし小さな情報しか得られないため、悪性か良性か、余命は?と言った腫瘍の細かな情報まで得ることは難しいです。
組織検査
摘出した臓器や、腫瘤の一部を切り取ってできる検査方法です。腫瘍を疑っての手術の場合、基本的にこの検査を実施することで良性や悪性の判断、その後の治療方針を得ることが出来ます。一般的に検査結果を得るのに1〜2週間前後の日程が必要です。
CT検査
現在の腫瘍科において、手術を計画するには必須の検査の1つです。事前に肺転移なども調べる点においても胸部レントゲン検査より有用です。ただし、全身麻酔が必要であること、検査には事前に予約が必要です。(CT撮影は提携診療施設にて行います)
遺伝子検査
一部の腫瘍には遺伝子検査が可能になってきており、腫瘍診断を補助しながら、病型を分類することにより抗がん剤治療の有用性を事前に知ることができます。当院でも積極的に利用しています。
腫瘍科の専門医療
当院だけでは対応困難なケースでは、獣医腫瘍科認定医1種獣医師と連携を行なっております。
(山本獣医師は日本獣医がん学会所属獣医師です)