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2018年3月20日診療日誌

昔から長く通院されているMIX犬の話です。

突然血尿した、とのことで先日当院を受診されました。詳しくお話しを聞いても、元気だし、頻尿などの膀胱炎症状もないし、血尿以外は問題ない、とのことです。

幸い、外ですぐ排尿をしてくれたので尿検査を行いましたが、顕微鏡中に妙な細胞を検出しました。詳しく分析するために、細胞形態をより判別しやすくする「ライト・ギムザ染色」と言う染色を実施したスライドが写真の2枚です。

明らかに異型性を伴う細胞が採取されており、いくつかは平板上に集塊を形成していました。

この細胞は通常の尿中には検出されるものではなく、すぐに詳しい検査が必要なものです。

このまま超音波検査を実施した結果が次に示す画像で、膀胱内に直径2cm程度の石灰化を伴う腫瘤病変を発見しました。

実は、この時点で膀胱腫瘍の疑いが強くなります。。

さらに精密検査の実施するため、これら尿の病理医による細胞診やCT検査なども考慮されましたが、飼い主様と様々な検討を重ね、発見から翌日に膀胱部分切除の手術を行う事ができました。

そして手術から3日目には元のように排尿も戻り、元気に退院していきました。

つい先日、病理検査の結果が届き、懸念していましたがやはり膀胱腫瘍の1つの「移行上皮癌」と判明しました。

この腫瘍は、動物の腫瘍の中でも極めてたちの悪い癌の1つです。最初の尿中の細胞よりこの病名が示唆されていたため、飼い主様には早期の手術のご提案をさせていただきました。悪性度が高く、末期の動物は耐え難い苦痛と戦っていく必要がある病名だからです。

 

血尿でやってきたら実は癌だった、、、と言うのが今回の結果ではあったのですが、今回も初診時の検査結果よりこれらを強く疑いましたので、飼い主様には突然のお話だった事を重々承知しておりましたが、早期の切除をご提案させて頂きました。

飼い主様には翌日には手術のご決断をいただき、発見から翌日には摘出を行う事ができました。

 

なるべくなら手術は回避したいものです、私も大型犬の飼い主としてその思いに変わりはありません。私も非常に高齢な動物や末期病態であれば、積極的な治療は行わず敢えて「引き分け」に持ち込むこともあります。ただ一方で、なるべく早期に切除することで、その後の生活の質や一緒に居られる期間は大きく変化します。

 

今回は飼い主様の迅速な判断が功を奏してくれました。このまましばらく再発がなく過ごせるか、一緒に見守っていきます。

 

山本@腫瘍の診察は「病気」と「飼い主様」の間でいつも一緒に悩んでいる獣医師

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