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2014年7月1日診療日誌

先日、またお昼に緊急の電話が・・。『後ろ足が急に動かなくなって、ダランとしている』と言う猫ちゃんの飼い主様からの連絡がありましたcat

ミニチュアダックスフンドでは椎間板ヘルニアが非常に有名な病気として、このような急性の後ろ足の麻痺症状はありますが、猫ちゃんでの椎間板ヘルニア発症は非常に稀です。

 

嫌な予感がしました・・・

 

すぐ来院頂くようお願いし、早速診察した所、猫ちゃんは大きく口を開け、いわゆる開口呼吸をしています。猫ちゃんは基本的に犬のように口を開けて大きく息をする動物ではありません。つまり、これは呼吸困難を呈しています。

すぐさま酸素吸入や胸水抜去など必要な緊急処置を施し、各種検査を実施しました。その結果のひとつ、腹部超音波検査の写真を載せています。

 

140701.jpg

 

この赤い色をつけた検査は、パワードップラー検査と言い、血流を捉えることが出来る検査方法のひとつです。画面真ん中に腹大動脈が写っているのですが、血栓により大部分が閉塞されているため、わずかな隙間から血液が流れていることがこの検査でわかります。

 

 

 

悪い意味で僕の予感は的中しました。診断名は『肥大型心筋症による大動脈血栓塞栓症』と言う病気です。

 

心臓の中で血栓と呼ばれる血の塊が作られて、これが腹大動脈が両後肢に分岐する部分、ようするに血管が細くなっているところに詰まってしまう病気です。人間では脳血管や心臓の冠動脈に詰まる病気(前者が脳梗塞、後者が心筋梗塞と呼ばれます)が多いですが、猫ちゃんは足の付け根の血管に詰まります。

このため、後ろ足には酸素と栄養が供給されず、後ろ足は急激に体温を失い、冷たくなり、動かなくなっていきます。。この状態の猫ちゃんは痛みが生じるため足を触られる事を非常に嫌います。

 

猫ちゃんが発症してから迅速に治療を開始することが生死を分ける事があるのですが、この麻痺状態に至ると救命率は極端に悪いです。

この子にも最後まで尽力治療を施しましたが、発症から約30時間後、安らかに息を引き取りました。。(30時間前まではいつものように元気だったそうです)

 

 

この病気は発症してしまうと非常に救命率が悪く、また急性に進行していくため、手の施しようが無いこともあります。そのため、心臓病があったとしても、この血栓塞栓症にさせないために心臓病と合わせて予防的な治療をしていきます。

特に健康診断で発見出来る事も十分あるため、特に症状を表に出さない猫ちゃんたちには健康診断が必要不可欠と私たちは考えています。

 

この子も定期的に半年に一度ほど健康診断に受診してくれていれば、早期発見出来ていればまた別のお別れがあったかもしれないと思うと、いつも遣り切れない思いがスタッフの間に交錯します。

 

当院ではこのような事例を踏まえ、今年から年に2回の健康診断シーズンを設けました。少しでも多くの方に利用頂けるなら、、、と思い、お値段も抑えました。猫ちゃんは7月末まで実施しています。

 

皆様に健康診断について少し考える機会を持って頂けたら幸いです。

 

 

山本@獣医師

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